杭打ちデータ流用問題もどこが問題なのかはっきりとしてきました。下記に7つの問題点を整理しました。
1.杭を打つ理由
⇒①近代以降、人口増や経済発展を背景に、軟弱な地盤にも建物を建てる必要が生じた。
②杭が建物と固い地盤をつなぎ、建物をしっかりと支えることができる。
2.杭の種類
⇒①支持杭:支持層まで杭を打ち込んで建物を支える
②摩擦杭:支持層までは打ち込まずに杭と地盤の摩擦力で建物を支える
3.杭打工法
⇒①既製杭工法:あらかじめ工場で製造した杭を埋め、杭の先端部と支持層をセメントで根固めする
②場所打ち杭工法:現場で組んだ鉄筋を穴に埋め、コンクリートを流し込んで杭を作る
4.なぜ流用したのか
⇒①建築当時は、杭打ちデータを紙で印刷するのが一般的であった。データ紙が雨で濡れたり紛失したりすると、取り直せなかった。
②データの取得や報告が軽視されていた(チェック体制の不備)
③元請け・下請けの力関係
5.法的責任
⇒①建設業法:データ流用が意図的と判断された場合、業務改善命令や営業停止となる
②建築基準法施工例:杭の先端が良好な地盤に達しなければならない(達していなくても構造上安全と確認できる)。補修などの是正措置命令。
③住宅品質確保促進法:新築住宅の引渡しから最大10年間は売主が瑕疵担保責任を負う。
6.建物の安全性
⇒①データが流用されていても、杭が支持層に届いている場合もある。
②杭の強度を実際の3分の1で計算している(安全率を3倍にしている)ため、杭の1本が支持層に届いていなかったとして、安全性が損なわれていない場合もある。
7.今後の対応
⇒①買取:マンションの価値が一番高かった時期を基準として、売主が各戸を買い取る
②建て替え:所有者の5分の4以上の賛成が得られれば、建て替える
③慰謝料:各戸に300万円の慰謝料を支払う。