不動産を売却するときの流れをまとめました。~12ステップ~
1.現在の残債を確認する。
所有不動産売却の大前提となる、ローンの残債を確認しましょう。これによって買い替えができるのか、売却時に持ち出しをしなければならないのか、いくらで売却しなければいけないかの条件がわかります。
2.査定を受ける
実際に不動産仲介会社に所有不動産を内見してもらわなければ、正確な査定金額はわかりません。信頼できる不動産会社2~3社に内見してもらいましょう。多すぎても結果はあまり変わらずにかえって疲れてしまいます。基本的に不動産査定は、(財)不動産流通近代化センターが作成している「価格査定マニュアル」に基づいて行われるので、どこの会社でも出てくる査定結果に大差はありません。
※机上査定は、不動産会社の担当する営業マンによって、依頼を受けたいために高すぎる金額を出したり、依頼を受けてすぐ売れるように低すぎる金額を出してくることもあるので注意が必要です。
3.媒介契約
査定をしてもらったら自分に一番交渉が上手そうな担当者を選びましょう。不動産売却の成否は担当者によって決まると言っても過言ではありません。二人で査定に来る場合は、役職者ではない営業担当がメインになる可能性が高いです。また、試しに仲介手数料の値引きができるか交渉してみましょう。さしたる交渉もなく仲介手数料の値引きに応じてくれるような営業担当は、買主からの交渉にも弱腰で対応する可能性が高いです。
・専属専任媒介契約:不動産仲介会社1社に販売活動を依頼し、売主が自ら見つけた買主と売買する際も必ず不動産仲介会社を媒介する必要がある。
・専任媒介契約:不動産仲介会社1社に販売活動を依頼するも、売主が自ら見つけた買主と売買する場合には、不動産仲介会社を介しなくても良い(その結果仲介手数料を支払う必要がなくなる)。
・一般媒介契約:複数の不動産仲介会社に販売活動を依頼する。売却となった場合には、買主を見つけてくれた不動産仲介会社1社に仲介手数料を支払うことになる。
4.販売活動
媒介契約を締結した後は迅速に販売活動してもらいましょう。買い主は近場にいる可能性が高いです。最寄り駅圏内、同一学区内、同環境内、マンションであれば同じマンション内の買い替え(広い部屋から狭い部屋へ、狭い部屋から広い部屋へ)、マンションに住んでいる方の身内の人が買ったりすることもあります。
・インターネット掲載
最近はインターネットの普及により、新聞折り込み広告を見てお問合わせをするお客様よりもインターネットを見てお問合わせする お客様の方が多いです。新聞をとっていない家庭も増えています。また、近所に販売活動の事実をあまり知られたくない場合でも、インターネットは興味がある人しか見ないため、新聞広告やポスティングチラシが入らなければ販売活動していることを知られることも少ないです。
・新聞折り込み広告やポスティング広告
ご高齢でインターネットを扱えない方や積極的に不動産購入を検討していない方などへの物件告知で有効なのは新聞折り込み広告やポスティングチラシです。特に低金利である昨今は、家賃よりも住宅ローンの方が安い場合が多いため、広告チラシには購入時の毎月の返済礼を記載してもらうようにしましょう。
5.条件交渉
・金額交渉:一番大事なのが金額交渉です。担当営業から交渉を持ちかけられても簡単に応じないようにしましょう。かといって全く値下げをしないというスタンスでは営業マンが最初からあきらめてしまう場合もあります。細心の注意が必要です。自分が譲歩しても良いと思っている金額にするまでに2~3回の交渉を間に挟むようにしましょう。
・引渡期日:特に買い替えの場合で売却先行の場合は、引き渡し期日を6ヵ月程度とってもらうようにしましょう。ある程度厳しめに行っておけばその後の交渉が楽になります。
・手付金:固い契約にするためにはある程度の手付金要求した方が良いでしょう。また、手付解約の場合にはローン解約の時と違って仲介手数料を支払う必要が生じます。営業マンに緩い交渉をされないためにも、営業マンには最初から最低売価の6%以上の手付金が必要になるとプレッシャーを与えておきましょう。
6.契約
・重要事項説明書:主に買主側に対する重要事項説明です。売主としては説明を受けても仕方のない部分ですので、買主への重要事項説明部分には出席しなくても良いケースもあります。
・契約書:売主として注意しておくのは、物件に不具合のあった際には主要な設備で1週間、雨漏り・シロアリ・給排水管・木部の腐食の瑕疵については3か月間の瑕疵担保責任が売主に生じるということです。
・設備表:設備に不具合がある場合にはどんな些細なことでも記入するようにしましょう。特にトラブルが多いのは水漏れです。普段使っていて気にならないものでも買主からすると言っておいて欲しかったというケースが多いです。また、エアコン、照明器具、カーテンの撤去の要否はきちんと確認しましょう。エアコンなどは善意で置いていったにもかかわらず不具合が起きて修理の必要が生じることぐらいつまらないことはありません。基本的には不要な物品・家具等は売主の責任で撤去することになりますので、不要なトラブルを避けたい場合などは最初から撤去するように取り決めておきましょう。
・物件状況等報告書:雨漏り・シロアリ・給排水管の故障・木部の腐食など、瑕疵担保責任を負う箇所についてはどんな些細なことでも申告するようにしましょう。契約前に屋根裏や床下を点検してもらうことが肝要です。
・手付金の受領:買主から受領する手付金は結構な金額になります。手元に置いておくと自然と使ってしまう場合が多いため、必ず支払う必要がある仲介手数料は先に全金払ってしまい、余った金額は繰り上げ返済に充てるようにしましょう。
・契約印紙の貼付:契約書に貼付する印紙代は受領する手付金から支払いができるように不動産仲介会社へ伝えておきましょう。オーバーローンの持ち出しがある場合を除き、売主は基本的には買主からもらう金員から必要経費を支払うことができるので、現金を用意せずに全ての手続きを完了させることができます。
・仲介手数料の支払い:買主からもらった手付金から仲介手数料を支払います。契約時に半金・決済時に半金、契約時若しくは決済時に全金とすることもできます。
7.ローン承認
契約後には1か月程度のローン承認期間が設けられています。契約前の事前承認は得ているため、原則的にはローン不承認となることはないのですが、例えば担保評価が思ったより低くなってしまった・会社の経営悪化等の理由によりローン本申込みの承認が得られない場合もあります。売主としては、ローンが確実になってから繰り上げ返済等の各種手続きを行いましょう。
8.繰り上げ返済
住宅ローンが残っている場合には、対象不動産についている抵当権を所有権移転と同時に抹消する為、抵当権抹消のおよそ10日前~2週間前までに、ローン会社の窓口(平日)に行ってに繰り上げ返済の手続きをしなければなりません。その際、決済時の手続きを司法書士(所有権移転登記費用を負担する買主側が選定します)に委任すること、抹消書類を決済場所近くの支店に移送することをお願いし、なるべく手続きの手間を少なくするようにしましょう。
・火災保険
期間満了以降のの保険金の還付を受けられるように手続きをしておきます。
・ローン保証料
ローン保証料を対象不動産購入時にローン期間満了までの分を現金にて全額支払いしている場合、繰り上げ返済の手続きをすると、全額とまでにはいきませんが、繰り上げ返済以降の分で日割したローン保証料の一部の返還を受けることができます。
9.公的書類の準備
所有権移転の際には売主は権利を失う側のため印鑑証明書が必要となります。また、登記簿上の住所と印鑑証明書の住所が異なる場合、住所変更登記が必要となる為住民票が必要となります。引越してしまう前に印鑑証明書を取得しておきましょう。印鑑証明書は発行日から3か月間有効です。
10.引越し
引渡猶予がない限り決済前には物件を空にしておかなくてはいけません。引越業者の繁忙期には早い予約が必要となりますので注意が必要です。
11.決済・引き渡し
・残代金の受領
売買代金から手付金を除いた額を買主から受領します。通常は振り込みで売主のローン用口座に全額振り込みますが、ローン残高より残代金が超過する場合には、売主が振込手数料を負担することで複数の口座に分けて超過分を振り込んでもらうようにすることができます。
・抹消費用
住宅ローンが残っており受領する残代金による支払いで完済となる場合、所有権移転登記と同時に抵当権抹消登記が必要となり、抹消登記を司法書士に依頼するための抹消費用が必要となります。抹消費用は抵当権1本につき20,000円前後になります。
・清算金の受領
固定資産税は1月1日の所有者が納税義務を負うため、売主が支払う必要がありますが引渡日以降の分は日割り計算した額を買主から受領します。また、管理費等についても引渡日以降の分で売主の口座から自動引き落としされてしまう月の分を含めて買主から受領します。
・鍵を渡す
全ての支払が完了した後は買主に鍵を渡します。通常買主の振り込みが売主の口座に着金したことを確認できるようになるまではタイムラグがある為、買主から振込伝票の控えをもらうことで着金確認の代わりとする場合が多いです。早く着金が確認できるようにするために、「至急扱い」であることを銀行窓口で伝えてもらうようにしましょう。
・区分所有者変更届
マンションの場合、お部屋の所有者が変わったことを届け出る必要があります。不動産仲介会社が用意してくるのが通常ですが、管理規約にも届用紙が付いています。
12.不動産譲渡税
売却した不動産の購入価格が、売却価格より低い場合(高い場合でも減価償却により利益がでる場合があります)、その不動産を譲渡したことにより生じた利益について譲渡税(所得税の一種)がかかる場合があります。居住していた財産の売却であれば3,000万円の特別控除が使えますが、空家になっていた等の理由で居住していなかった場合に注意が必要です。